高木仁三郎 カッパブックス
現在起こっている原子力発電所の危機について、考えることが幾ばくかありましたので、過去に読んだ本を読み返してみた。
この本は1999年に起こった東海村の臨界事故を受けて、高木先生が、それまで書いておられた岩波書店等よりも一般人に向けて、啓蒙的に書かれたものです。
当時は、書店で平積みされていたので、気軽に手に取って読みました。(岩波新書だったら、手に取らなかったでしょう。その後岩波書店の分も読んだ覚えがあります。)
この本を当時読んで、まず思ったことは、原子力については、漠然としてながらも、常識としてその危険性を認識できていたことでした。
当時も、政府は声高に安全性を吹聴し続けておりましたし、今回の震災前までも、安全性を主張し続けております。
今思い返すと、危険について、不感傷になっていた事実に考えざる得ないです。
この本で書かれていることは、原子力を利用するという問題点を如実に提示している訳なんですが、自分が読んで漠然と知っていた以上に感銘を受けたところは、日本の原子力技術は、それほどのものではないということ、特に日本独自の技術は失敗ばかりだったこと、安い電力を提供している訳でもないことでしょうか。更に、原子力発電所内では頻繁に事故は起こっていること。
つまり、火力発電と同じくタービンを回して発電するしか利用できていないのが現実であって、それ以上の利用は挫折してきた。(なのに、この本出版後10年以上莫大な研究費は投じられ続けている)
そして、今読み返すと、古くなったは原子炉の廃炉問題が一番大きいと思いました。
そういう点を考えると、原発に依存しないエネルギー政策を、迅速に実現すること。
積極的に、脱原発をやっていくほうが、エネルギー政策としては「安定的な政策ができると、高木先生は提言されておられます。
この本の出版後まもなく高木先生は亡くなられている訳であり、この本で主張されている内容を真摯に検討して来なかった、つまり東海村の臨界事件の教訓を全然生かせなかった10年がある訳で、今度こそ、原子力利用について、国民的な議論をするべきなんでしょう。
自分が考えるところ、日本の原子力技術が全くダメだとは思えないので、この本で書いている以上のものであって欲しいし、これまでの10年でも進歩しているはずだと思う。
技術として、これからの展望が見通せないと判断できるなら、脱原発するべきだと思うが、可能性があるのなら、原子力を利用していっても良いのではないかとも思う。
本当のところ、原子力利用に可能性はあるのかは不明であるとは言えますね