背教者ユリアヌス 辻邦生 中央公論
ついに最後まで読んでしまった。
第七章 神々の導くところ
第八章 ガリアの東
第九章 ルテティアの丘で
第十章 東方への道
第十一章 異教の星
第十二章 ダフネ炎上
終章 落日の果て
となっていました。
第六章でギリシアの派遣されて、好きな哲学三昧の日々を送っていたところまでだたったのなら、夢見がちな、女心に疎いうっかりさんで済ませそうな気もするのですが、
この小説の後半の展開は、波瀾万丈ですね。
副帝としてガリア派遣。ガリアにはゲルマン民族が襲来してくる。更にユリアヌスを快く思わない宦者により、ユリアヌスの配下には、反ユリアヌスの人材ばかり配置される。
副帝にユリアヌスがなった時に、同時に結婚もさせられ、コンスタンティン大帝の残っていたヘレナと結婚するのだが、それに対して皇后エウゼビアは、ショックを受け、引きこもってしまう。
ガリアでは、ユリアヌスは思わぬ軍事的才能を発揮し、不利な状況から勝利に導くことに成功する。
ここでの戦闘場面は、この小説で最も白熱し面白いところかも。
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ローマが不敗だということは諸君の一人一人が不敗だということだ。それを諸君は今日学んだのだ。ローマが不敗だということーそれはまた諸君がそのことを学びうるということなのだ。
ユリアヌスはローマ的なもの大切にし、ローマがローマたらしめているものを守り続けたかったのでしょうね。
ユリアヌスのガリアでの成功は、皇帝コンスタティウス及びその腹心の妬みの対象にもなり、ペルシア遠征のガリア兵の派遣を要求されることになる。
ガリア人は、その決定に激昂し、ユリアヌスを皇帝に戴こうとする。
ユリアヌスはガリア人の意を汲み決起する。
この辺は西郷さんみたいせすね。
皇帝側と対峙している内に、コンスタンティウスは死に、ユリアヌスは正式にローマ帝国皇帝となる。
ユリアヌスは、ペルシアとの対立のい問題、ローマたらんとすることを拒むキリスト教徒をどうするかということに悩む。
そしてペルシア遠征の途上、流れ槍に当たり死んでしまう。
最後の方のキリスト教との対立は、実に歯がゆいものがありましたね。
背教者との烙印を捺されているユリアヌスなんですが、必ずしもキリスト教は拝外した訳ではなく、融和を図ろうとしたその意志が無碍にされてしまった過程が描かれていましたね。
こういうのは、正論であっても、キリスト教社会では、違った描かれ方をしてしまうのでしょうね。