帝王聖武 天平の勁き皇帝 滝浪貞子 講談社選書メチエ
この本の作者の滝浪先生が書かれた、集英社版「日本の歴史」の中の「平安建都」は自分の愛読書であり、とっても素晴らしい内容だと思うね、都での生活とか、官人の勤務体系とか、百姓の生活とかが、カラー図版で読める。
このシリーズはバブルの頃の企画なので、豪華でいいよね。
中でも滝浪先生の本は、素晴らしいと自分は思うわね。
なんていうか、サービス精神があるんだね、ダメな子に対しても分かりやすく語ってくれている。
優しい先生なんだね
この本のおかげもあって、自分は平安時代が好きですね。
図書館とかでも、この本はよく見られるので、買わなくても比較的簡単に読めるのもいいかも。
この聖武天皇を扱ったこの本も、興味深い内容だったね。
大半の人にとっては、大仏を建立した人くらいの認識しかないし、社会福祉設備である悲田院、施薬院を作った光明皇后の方が有名かも、更には大仏建立に尽力した行基さんの方が知られているかも知れないわね。
自分みたいな、えせ歴史好きな者は、それよりちょこっと進んだ認識で、聖武天皇は、あっちこっち都を移していった優柔不断な人だったというものなんだね。
そういう一般的な聖武天皇像を見直すのが、この本のテーマで、
聖武天皇は、気が弱いのではなく、構想が大きい人で、いろいろな視点を持って政治を進めていったことが書かれているね。
都を転々していったということに対しては、
・ 一言でいえば、広く天下に呼びかけて行う聖武の造仏事業への理解を求めたものである。
と先生が書かれている。
けっして優柔不断なだけではなく、その底意には深い思慮があったということが述べられているね。
奈良時代は、権力闘争が激しく。
聖武即位への道のりのは、さまざまな布石があったからこそなった、そこには元明、元正という二代の女性天皇の繋ぎが必要になったこと。
そして娘への譲位へも細心ある準備を施す。
そういったところは、聖武天皇の娘への愛情とも言えるかも。
先生は、光明皇后については、それほど厳しい態度で望んでいないのも新鮮に感じたね。
更には悪名高い、藤原四兄弟に対しても、否定的ではないわね。
これらの人たちは、世間では、まだまだまだ悪く言われていて、高校の日本史でも、否定的に教えられているのではないのかな。
そういう歴史観は古いですよと言えるかもね
それと、歴史の繋がりというのが実感できたね。
社会制度とかにには、記述は少なかったけど、律令制の衰退、三世一身の法とか墾田永年私財法の登場の繋がりを、実感として自分は読めたね。
自分は全くの素人なので、細かい出来事とかは、分かりち難いところもあったけど、面白く読めて満足。知らないことを知ると元気が出る。
聖武天皇の後を継ぐ、孝謙天皇の問題は、先生は他の著作で書かれているみたい。
そのうち機会があればそれも読みたいですね。
それにしても、その後の歴史の経緯を見れば、
聖武天皇の直接の皇統が絶えてしまい、ただの大仏を作った人とだけ認識されるのは、孝謙天皇の没後まもなくらしいね、栄枯盛衰は歴史の常というのは、ここでも言えますわね。