とある飛空士への追憶 犬村小六 ガガガ文庫
評判の良いこの本を読んでみた。
空を飛んだりする人は、普通の人間と違ったものを持っているのかも知れないわね。
本当に綺麗な空を見ていると、心まで綺麗になっていくのかしら。
この小説は、ボーイミーツガールであると同時に、少女の再生の物語でもあるわね。
その再生のきっかけは、少年の純真さ。
激甘ですね。周りは危険一杯ですが雰囲気いいです。危険がより二人を近づけるというのは、昔からよくあることですね。
内容は、
敵対する二つの国の、押され気味の国の、飛び地にいる世にも可憐な時期皇妃を本国に移送するために、その職務を命じられた少年が、皇妃である少女と旅をする話。
的中突破であり、絶体絶命のピンチになりながら、助け合い機知により乗り越えて、それからどうなる。
なんていう要約だ。(詳しくは信頼できるサイトを覗いてください。)
ベタベタな展開ですので、自分がすれっからしと思う人は、なんやねん。ストーリーバレバレやん。とかとか言いたくなるでしょうね。
でもそういう異論を封じさせながら、読ませるのは作者の筆力でしょうね。
釣りしたり、星を見上げたり、
そういう単純な描写が堪らないうきうき感を感じさせるのですからね。
可憐なファナさんに
・ 「飛・空・士、さん」
と呼ばれちゃったら、普通はくらくらしちゃうわね。シャルルの自制心は大したものだね
・ 「ファナもいるから」
ここでもくらくら。ここは危ないところだ、それどころではないわね
・ 「わたし役立たずだね。ごめんね。どうしようもないお荷物だね。」
そんなことないよ。と作中失神寸前のシャルルに変わって答えてしまったりして。
・「僕に話かけてほしい」
危険の中、濃密な時間が流れている。
なんなんだ。この甘さは。
この後続いていく会話は、………
そうなっていきますか
ちょっとこの小説に不満のあるところを書いてみると、
自分的には、いろいろ苦難があっても、例えば敵機に撃ち落とされることはないとかが実感できたりしたので、安心感はあったけど、意外性がなかったのはマイナスかも。
それにファナのことを
・ 清潔で健康的な牛乳色の肌、薔薇色の薄い唇。湯浴みの祭には非の打ち所のない魅惑的な曲線を描き出すその身体は、いまは葡萄色のドレスに包まれて、こぢんまりと、謙虚に、ゆうたりとした布地のうちに収まっている。だが衣服がどんなに肉体的な魅力を押し隠そうとしていても、その輪郭からは赤い光輝じみたものがたちのぼり、触れてみたいような、触れがたいような、どこかこの世のものではない。彼岸から来たもののごとき妖しい魅力を醸しだしている。
というような敵対する両国が奪い合うような美少女だと入念に描写する。
一方、シャルルとの飛行において、途中待機した島で、あどけない表情をみせたりする。
その落差に、自分はたまらないエロいものを感じてしまったわね。
その手法は、エロ小説の常套手段やんけとね。
この辺は上手すぎて、自分的には引いた。(自分はエロいおっさんなので、普通の人はそんなこと考えないでしょう。)
とかとか、けちも言いましたが、自分の好き度は9です。
良い話ですね。