さすらいのジェニー ポール・ギャリコ 矢川澄子訳 大和書房
あの「文学少女と死にたがりやの道化」の、遠子先輩に導かれて、自分の中では、ポール・ギャリコがマイブームになっています。その中でも、この「さすらいのジェニー」は最高です。これは、
マインと呼べる物語だと思います。
粗筋は、ピーターという8才になる少年は、猫に気を取られた隙に車に轢かれてしまった。目覚めると猫になってしまっていた。猫になったピーターは危うい体験をした後、ジェニーという虎猫と出会った。ジェニーとピーターの二匹は、いろいろな体験をし、旅もした。ピーターにとってジェニーはかけがえない存在になり、そのジェニーを守るためデンプシーという大きな猫との決闘の後、相手も仕留めたが、ピーターも瀕死の重傷を負い倒れた。目覚めると、病院で人間に戻っており、ジェニーの記憶もなくしてしまっていた。
というような童話。
このお話は、面白いのは、もちろん。
少年が成長していくビルディングストーリーとしても秀逸。
しかし、人間の記憶も猫の記憶もどちらも持つことは叶えられないし、どちらの存在でもありえない。どちらにしかなれないけれど、その猫の経験は、このピーターという少年に良き影響をのこしているのは明かだよね。
このお話の面白いところは、猫にとって一番重要なことと、二番目に重要なことが述べられているところかな
それは、「困ったら舐めろ」「飛び出す前に止まれ」
これ、交通標語じゃんなんて、言わないでね
猫にとって、重要な世間知なんだよ。
この言葉が、何故猫にとって、重要なのかを考えることは、猫というあり方も考えることになるのだよ。
なあーんてね。難しいことにも考えが及んでしまうような、この物語りは、想像の世界へと誘ってくれる
まあ。猫っていうのは、忘れっぽいので、相手が怒っていても、身じろいをすると、取り敢えず休戦となる。そして、猫にとって、一番重要なのは、身綺麗にすることなんだ
また、猫の日常は危険が一杯、用心して飛び出すのは、戒めなければいけないということ。
この猫の属性をよく分かり、人間だったピーターを優しく労り、猫のことを教えてくれるジェニーは、良き教師であり、友であり、恋人なんだね。
でも、二匹は、この現世では結ばれない。
別れが訪れる。せつないけど、それが生きることということもこのお話は教えてくれる。
なんて上質なお話なんだろうね。
この物語りは、新潮社でも「ジェリイ」というお話で出ている。これは、簡単に古本屋でも100円で買える。しかし、この矢川澄子さんの柔らかい訳文は、かゆいところに手がとどくようで、ジェニーの心地よい鳴き声が聞こえるようで、素晴らしい