影法師

自分が読んだ本の感想を書くブログです。
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20 道しるべ

いったい何故 私は ほかの旅人たちが行く 道を避けたりするのだろう

何故 私は雪のつもった高山の岩根をすぎて かくれた小径を探したりするのだろう

 

いやしかし 私は 人々を怖れねばならぬことは、何も犯しはしなかったのに

何という愚かしい願望が 私を荒野のなかへと駆り立てるのだ

 

いくつもの道しるべが 道の上に立って 町への道を示している

だが 私は限りなく さすらうばかりだ

安息もなく しかも 安息を求めて 

一つの道しるべが 私の眼の前に動きもせず じっと立っているのが見える

一つの道を 私は行かねばならぬ

まだ誰も 行って帰ったことのない道を 

まぼろし
 一条の光が 親しげに 私の前で踊っている
私は 縦横にそれを追って あとからついてゆく
私は 喜んでそれを追って やがてそれが 旅人を惑わす光であるのを知った
ああ しかし私のように 惨めな人間は この彩られた狡知に進んで身を任せてしまうのだ

それは氷と 夜と恐怖のかなたに 一つの明るい暖かい家を示してくれる
また その家のなかに 一つのいとしい魂を示してくれる
ただ幻だけが 私にとっては収穫なのだ


恋人の姿が、霧消したというより、光になってしまったのかしら
幸せの希求というのか、それとも暖かい光のなかにのみ、その幻を見るのでしょうか
まだまだ冬ですね
18、嵐の朝
 何と嵐は天空の灰色の衣を引き裂いたのだ
切れ切れの雲は戦いに疲れてあたりを乱れ飛んでいる

そして赤い火焔が 雲のあいだをさっと走る
これこそ私はまことに わが意を得た朝だ と呼ぼう

私の心が見ているのは 天空に描かれた自分自身の像だ
これこそ 冬以外の何ものでもない
冷たい 疲れ果てた冬だ


何を青年は見ているのだ
これは吉兆なのでしょうか 凶兆なのでしょうか
村にて
 犬どもが吠え 鎖ががちゃがちゃ鳴いている 人々は ベッドのなかで眠っている
彼らは自分たちの手に入らない 多くのことを夢見て 良きにつけ 悪しきにつけ 元気を取り戻している

そして 朝があければ すべては 融けて 流れ去る
とは言え 彼らは 自分たちの分け前を楽しんだのだ
そして まだ自分たちの 手に入らないものを褥の上で やはり一度見出したいと
望んでいるのだ

目覚めている犬どもよ まあ私に向かって吠え続けるがよい
私を まどろみの時間のなかで 休ませないでくれ
私の すべての夢は終わってしまったのだ
どうして 眠っている人々のあいだで ぐずぐずする必要があるのだろうか


青年は、まだまだ、すねてますね
もう何がなんだか、分からなくなっているみたいです
16、いや果ての望み
 そこここの木々に たくさんの色づいた木の葉が見える
そして私は木々の前に思いに耽ったまま 佇むことがしばしばだ

一枚の葉を 私は見つめ その葉に私の希望をかける
風がその私の木の葉とたわむれるときには
私は震えられる限り 体が震えてくる

ああ 木の葉が地に落ちると それといっしょに 希望も落ちる
私自身も 大地に身をおとして 私の希望の墓の上で泣くのだ


ここでは、木の葉と自分を同一視。
はかない希望ですね。ふうっとため息
からす
 一羽のからすが あの町から ずっと私といっしょについて来た
今日まで たえずからすは 私の頭のまわりを飛び続けている

からすよ 気味の悪い動物よ あまえは私から去ろうとはしないのか
きっとここで私が死んだら扉を 獲物にして捉えようと思っているのだろう

ともあれ この旅路の杖にすがって行くのも もうそんなに遠いことはない
からすよ 最後に私に見せてくれ 墓場に至るまでの誠実というものを


からすって、西洋でも不気味な鳥なんですね
青年は、死の誘惑に囚われ続けていますね
14、霜おく髪
 霜が一筋の白い光を 私の髪の上に撒いた
そこで 私は 自分がもう老人になったと思って たいそう嬉しかった

けれども まもなく霜は融けて消え 再び私は黒髪になった
そうして まだ棺台まで どんなに遠いことかと
私は 自分の若さがおそろしかった

夕焼けから 朝の光までのあいだでも
多くの頭が白くなったものを 私が信じてくれよう こんな長い旅の途上にあるのに
私の髪は 白くならなかった


青年は、早く老いることを望んでいるみたいですね
この世の苦しみ、失恋の辛さから逃れるためなんでしょうか
髪が白くなったことが嬉しい。自虐的なんですが、心情は偽らざるそのままということなんですかね
逆説的に言えば、このことが若さそのものなんだと思うのですけどね
13、郵便
 通りの方から 郵便馬車のラッパが響く どうしたんだ そんなに高く
鳴ったりするとは 私の心よ

郵便馬車は お前の 手紙を運んで くるんじゃない
いったい何で お前は そんなに怪しく 切迫するんだ 私の心よ

なるほどそうだ 郵便馬車は 町から来るのだ
私の かわいい恋人のいる町からだ 私の心よ

お前は いつかきっと その町の方を見て
そこであの娘がどうしているか 訊ねたいのだろう 私の心よ


まだまだ、青年は、元恋人に未練たらたらです。
昔は、情報が少ないから、こうなってしまうのかしら
元恋人は、もう青年のことを、すっかり忘れてしまっていると思うのだけどねえ
12.孤独
 樅の木の梢を 一そよぎの弱い風が吹くとき
一すじの濁った雲が 晴れた大気のなかに流れてゆくように

私はわが街を 疲れた足どりをして 明るい愉快な生の間をすり抜けて
ひとり孤独に 挨拶もしないで歩いてゆく

ああ 大気は こんなにも静かだ
ああ この世は こんなにも明るい
しかし まだ嵐が吹きすさんでいたときには
私は こんなに惨めではなかったのに


青年の心の内は複雑ですね
若さというのは、一方的に落ち込むだけではなく、その孤独な心にも明るい光も、爽やかな風も吹いてくるんですね
若いって良いですね
  
11、春の夢
 私は 色とりどりの花が 五月にきれいに花咲くのを夢に見た
縁なす野原を夢に見 陽気な小鳥の叫びを 夢に見た

けれども おんどりが ときを告げたとき 私は眼を覚めた
すると あたりは 冷たく 薄暗くて からすが 屋根から 鳴いているのだった

だが、窓ガラスに 木の葉を 描いたりしたのは 誰なのだろう
お前たちは 冬の最中に 花を夢見る夢想家を あるいは笑うだろうか

私は 次から次と 愛のことを 夢に見た ある美しい娘のことを
心を口づけを 歓喜を浄福を 夢に見た

けれども あんどりが つきを告げたとき 私の心は目を覚ました
すると 私はここにたった一人で 坐っていて
あの夢を 思いかえしているのだった

私はもう一度眼を閉じている
まだ胸は熱く打ち続けている いつになったらお前たち
窓辺の木の葉は緑になるのだろう
いつになったら私は恋人を 腕のなかに抱けるのだろう


まだまだ未練を続いていますね
青年の心の中では、恋人はどんどん美化されているのとちゃいますか
思い出は美しくて、夢の中のあなたは、素敵だ。
しっかりしてくださいよ、と言いたくなりますね