影法師

自分が読んだ本の感想を書くブログです。
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汚れた7人
汚れた7人   リチャード・スターク/〔著〕 小菅正夫/訳  角川文庫


金城編集長セレクト

この本は、即絶版になりそうですね。
今買わなくては、買えなくなっちゃうと思ったわね。
面白い本が、ずっと出続けるれるとは限りらないですしね。

必ずしもミステリー好きとは言えない、自分などが、少しでも何らか書くのもおこがましい気もしますが、少し書いてみますと。

パーカー
 とその仲間の7人が、フットボールの入場料を強奪したのだが、パーカーがしけ込んでいたところで、少し外出した間に、現金と泊まっていた女が殺されてしまうんですね。
パーカーは、その現金を取り戻すべき行動するのが、この本の内容です。

・ 彼は自分が理屈にあわないことをしている自覚するのが大嫌いだった。

と述べている通り、筋を通そうとするんですね。いとも簡単に殺しもしてしまう。
終盤向けて、盛りあがっていくところは、カタルシスがあって、本を読む楽しさがあります。

解説の三橋先生の文章で、なるほどなるほどと思いましたね
一種のパターン化がされているんだ。

もう少しスターク、そして同一名義のウエストレイクの本を読んでみようと思いましたね。

神と野獣の日
神と野獣の日     松本清張    角川文庫


東野編集長セレクト。

この小説はパニックものですね。
Z国という太平洋上の国から、誤って核搭載のミサイルが首都東京に発射されるんですね。発射された5発のうち3発は途中で打ち落とせたのだけど、2発が確実に東京にやって来る。もうダメだという数十分を時系列で描いた小説でした。

太平洋上のZ国でなく、北朝鮮なら、実にタイムリーな小説なんね。この小説は昭和38年に週刊誌に連載されたものですけどね。未来を見通したかのようですね。
北朝鮮なら、数十分も猶予はないですね。
発射が確認されたら、即日本国土に到達です。小説にする間はないですがね。

政府の慌てふためく様は、笑えるのだけど、笑えないですね。絶えずアメリカとかの意向を気にするし、世界中の声も気になる。爆弾到達後にその処理が拙かったことを気にして汲々しております。
実際日本がこういう事態になると、日本政府内は、こうなのではないか。と思いますし、日本人自身の自律心というものは、本当にあるのかと考え込みましたね。

それと。こういう事態になったら何か音楽を流すということで、子守歌を流すところも、実にシュールでしたね。


でも、自分は、楽しめたかというと疑問かも。
パニックものは、映画で度々取りあげられているし、人々の混乱した状況もそれなりに予想できたような気もしたからかな。
新幹線殺人事件
新幹線殺人事件    森村誠一   角川文庫


東野編集長セレクト。
この本は、今から40年前に発表されたもので、大阪万博のプロデューサーを掴もうとする芸能プロダクションの暗闘を絡めた殺人事件のアリバイを崩す話でしたね。
容疑者は分かっていて、その謎を暴いていくんですね。
ミステリーの謎解きには、それほど詳しくない(全く苦手です。)自分の目からしても、見事なもんだと思いました。
実に技巧的ですが、無理はないと思いました。

自分がこの本を面白く感じたのは、芸能界についての記述ですね。40年前も今と較べて対して、進化していないように感じましたね。

・ テレビの普及のおかげで、一億総タレント化と言われる現代において、タレントになることは、頭も力もなく、家庭も貧しい若者たちが、最も安値にハイソサエティの憧憬を満たせる「シンデレラのガラス靴」であった。

とあります。ちょっと類型化した描かれ方をしておりますが、概ねこの話の40年後の現代でも当てはまりそうです。

この小説の登場人物は、皆内面は深くないんですね。
プロトタイプなんです。なので分かりやすいし、読みやすいです。
でも、そういう描き方をしていることで、現代人の内面の貧困を描いているようで、考え込んでしまいました。
実際現代人は薄っぺらなんでしょうしね。

この本を読んで自分が想起したのは、最近のあのタレントの泥酔全裸事件です。この事件において、テレビ等と芸能マスコミは、見事なまでに擁護の姿勢に終始し、その事件の疑わしいところを封殺しております。
大衆がバカだと、舐めきった態度だと思うんですけど。それに追随してしまうファンとかもいるし、変な感じになっております。
男が、全裸になって何が悪いとと主張するのは、権利の拡張なんでしょうけど、女性とかが、声高にその主張をするのは、おかしいと感じないのでしょうかね。
一方、ネット時代になので、そういう風潮はおかしいという声もあり、多少でも風穴はあいているんでしょうか。

この本においては、大手プロダクションの社長である紀久子さんが、やっぱり魅力的ではありました。美しい女の人が、その武器の有効性を認識し、野心もあれば、世の中には敵はない。多分真実なんでしょうね。

・ 紀久子は、女の武器を使えば使うほど、その威力、つまり“商品価値”を減ずるものだと信じている。だからそれを愛とか恋とかいう得体の知れない感情の燃焼のために、安売りというよりは、無料で提供する女たちの気が知れなかった

この本面白かったです。
もっと森村先生の本を読みたいと思いました。
冷静と情熱のあいだ Blu
冷静と情熱のあいだ Blu    辻仁成    角川文庫


山田悠介編集長セレクト。
この本には、姉妹本のROSSOがあるらしいので、そちらも読んでみようと思いました。

この本は、話題になった本でもあるし、好きな人も沢山いらっしゃるでしょうけど、自分も含めて罵詈雑言を発っしたくなるものではあります。

主人公の順正さんは、十年前に別れたあおいさんのことを忘れられないんですね。現在は仕事も恋人も恵まれていますけど、同僚には嫌な奴はいてもね。
時々に過去の恋人あおいさんのことを思い出すんです、そして現在の恋人と芽実さんと比較もする。
男目線では、そうなんですけど、こういう思いを抱いて、芽実さんを何度も何度も抱いてしまうというのは、芽実さんが可哀想と思ってしまいますね。
身勝手な奴と思われても仕方ないのではないかしら。
色恋というのは、独善的なものであるし、感情はコントロールできるものではない。更に物語世界での出来事だ。
でも、それで一人の女の子を深く傷つけ続けるというのは、どうなのかしら。
順正さんとあおいさんは、別れなかったら良かったのだし、もしくは別れた後、特に順正さんは、安易に他の子と関係を持つべきではなかったのではないか。

それと人間社会では、男と女では、対等な関係にはならないのではないかとも思った。
女性はどうしても容色の衰えが男よりもあるし、30くらい過ぎでの別れるというのはきついでしょう。(芽実さんは20台半ばくらいかな)、一方男はそうではないでしょう。
力のある男はそうではないですよね。

なので、そういう女性の立場をある程度理解してあげないと、あっちこっちで人傷事件が発生してしまうでしょう。(現実世界でも事件になってしまってます。)
もちろん、こんなことはこの物語世界には関係ない話です。
ですが、ある程度年を取って、こういうストーリーを読むと、傷つけられた女の子への同情の方へ、より目がいってしまうんですね。
もちろん順正さんと芽実さんは、別れることにはなるんですけど、それは必然ですけど、そこに釈然としないものを感じます。
自分たちだけ良ければいいのか。

この話は読み応えのある本ですね。
イタリアの情景はきれいだし、人間関係も暖かさがあります。
実に甘甘な話です。

陽のあたる場所 浜田省吾ストーリー
陽のあたる場所 浜田省吾ストーリー    田家秀樹   角川文庫


重松編集長
 セレクトの「陽のあたる場所」を読んでみた。
まず断っておかなくてはいけないのは、自分はロックもJポップも全く聞かないで育ってきたし、現在も聞かない人間なんですね。
ですので、浜田省吾さんのことほとんど知らないんです。
ですので、失礼なことを書いていたり、事実誤認があれば、ご免なさい。

この本の出版は1988年と今から20年前ですね。
若い人たちにとっては、この本の青春物語は、どう写るのでしょうか。
この本で語られる時代は、良きにしろ悪しきにしろ、経済も文化もキャッチアップだった頃ですね。日本が少しづつ自信を持ち始めた頃の話です。
この本の出版後バブル崩壊があり、不景気な時代となり、目指すべき指標を失っていった時代が、その後にあります。
おそらく、若い世代には、断絶した感じを抱いてしまうのじゃないのかな。

でも、いつの時代の人でも、颯爽と浜田さんが音楽の世界に自然な感じで入っていくところには、スターとはこういう感じなんだなあとは思うでしょう。

音楽界に入ってから、どういう曲を作るのか、どういうことをやりたいのか。
ということが綴られていますが、オーラーとか、スターの放射があっ上での書かれている訳です。
人気がなくなってしまったら、やりたいことをする前に消えてしまう世界なんですから、厳しい世界で自分の世界を通していくのは、凄いことです。

やはり音楽界に入る前の話より、その前の話が、自分としては面白かったです。
やっぱり浜田さんの音楽を当時も今も聴いていないのは、失礼ですし、その曲がどうとか書かれていても、分からないのは、どうしようもないですしね。

・ 「こういう連中が、先生になるんだ」と、少しだけ嘆いてみせた。そこにのっていたのは、省吾の目には、好きになれないタイプばかりだった。気弱そうな受験少年、軟派なC調タイプ、そして、無批判な、単なる体育少年……仮に彼らが自分の先生だったらと思うと、背筋が寒くなるような名前が並んでいた。

・ 省吾は、4年生の就職問題を目のあたりにして、仮にまともに出た場合の限界も見てしまった。髪を切り、ネクタイ姿で、就職試験を受けて社会人になっていく先輩たちの姿は、彼の描いていた夢とはほど遠かった。

浜田さんは、冷徹な目を持っているんですね。
凡人は漠然と日々をやり過ごすし、その時々をなんとかしていくのですが、浜田さんは、そうではないんですね。賢い人だと思いました。

浜田さんの曲をこれから少しづつ聴いていく、そしてこの本もそれからじっくり読んでみようと思いました。

夢果つる街
 夢果つる街   トレヴェニアン 北村太郎(訳)  角川文庫


桜庭編集長セレクトのミステリーを読んでみた。
この本は、宝島社の毎年恒例の「このミスがすごい」の第一回の海外ミステリー部門第1位になった本ですね。
ミーハーな自分は即買いしたのですが、放ってしまったのです。そして積んでいました。
20年くらいぶりに書庫から取り出してみました。

丁寧に作られた本で、序盤にモントリオールのザ・メインという街、そこに住んでいる人々の描写があります。
最初の方で、主人公のラポワント警部補の過去も語られます。
そこでいきなり涙腺がゆるんだ。
いきなり泣かせる。

では、ラポワント警部補はどういう人物かと、言うと自分がこの街の法律であり掟だというような人物です。
独善的なんですが、情もある。
海外ものなのに、人情派なんです。
ラポワント警部補の脇には、新人刑事がつく。
古い考えと新しい考えの対立というより、いつの時代にもある世代間の格差があります。
そしてこの新人刑事は選択をするのですが、それは思わぬものでした、ラポワント警部補から学んだ跡がありました。
そういうところは素敵ですね。

ラポワント警部補の元には、若い女の子もいついてしまいます。
その女の子とのやりとりも、情があります。
ここも琴線に触れるところ。
あんたたちはどうなってしまうのだろう。
余韻のある終わり方をしています。


・ もう死ぬものと観念していた路地。人間というものは、ひとたび自分は不死身なのだという感覚を失ってしまうと、二度とそうは思えなくなるものだ。


・ フランス系カナダ人が肩をすくめるとき、それは計り知れないニュアンスを持つ。ことば以上にものをいうのだ。


・それが問題なんだよ、お若いの! おまえは何も知ちゃいない。教科書には何も書かれていないんだ!


・ 彼女の屈託のない表情を見ているのは楽しかった。この子はまだ仮面をつけていない。うまくうそはつけるが、まだそらとぼけたりはできない。人の口車には乗せても、まだ二心ある行動をとる力はない。粗野で悪趣味だが、すれていない。この子はまだ若く、傷つきやすいのだ。一方。おれは、年寄りで……タフだ。


・ 連中が相手の女の子のことを、「話上手だぞ」とか「すごいユーモアのセンスあり」とかいうときは、いつも決まって、その子はブスだという意味だったのさ。あのころおれはブスよりブタがほしかったんだ。


この物語は、細部の言葉が本当に味わい深いです。
いくらでも面白い言葉が抜き出せるような気がします。
角川文庫の編集長フェア

 角川文庫で、角川文庫の編集長フェアなるものを一年間くらい続けているらしい。最近知りました。
この企画は、その先進性が素晴らしいですね。

その企画は、毎月作家が編集長になり、6冊ずつ本を選んでいくという企画です。
NHKの日本の百冊などより、ずっと読書欲をそそる選択をしております。

自分は昨年、織田作之助の「青春の逆説」という、絶対復刊もされないような本が、本屋で見かけて読んだりしました。
それが毎月やっているものだとは、その時思い至りませんでした。

この企画がスタートして一年経って、12人の編集長が6冊ずつ紹介して、72冊の本が紹介されました。
自分が読んだことがあるのは、その中のたった12冊です。
この機会に、折角素晴らしい本が紹介されていることだし、紹介された本を何冊か読んでみようと思いたちました。
最低一編集長のうち、一冊。
12冊以上読むのを目指してみようと思いました。

それにしても、この12人の編集長の選ぶ本というのには、興味が尽きないのですが、自分が苦手なものばかり選んでいる人もいますね。
自分は、ホラー小説、恐怖小説は苦手、本格推理も嫌。
エッセーも余り読まない。
なんですが、編集長の中には、そういうものばかり選んでいる人がいますね。
この機会に、そういう本にもチャレンジしてみようと思うのですが、深夜トイレに行けなくなる心配がありますね。

この12人の編集長のうち、自分が好きである作家は、
桜庭一樹先生、森絵都先生、東野圭吾先生。
の3人ですね。
そしてその先生たちの選ぶものが、一番読みたい本が多いですね。
重松清先生と金城一紀先生の選択の中の本は、買っておかなくてはいけないようなものが多いような気もしました。
京極夏彦先生の選択は、渋くて、自分の好きな領域ではないのですが、面白そうです。
この中で、一番自分が唸ったのは、東野先生ですね。
東野先生とは、自分は生まれ育ったのが近所でもあるので、親近感があることも原因なんですけど

・ 新幹線殺人事件 森村誠一
・ 声の網  星新一
・ OL無印物語 群ようこ
・ テロリストのパラソル 藤原伊織
・ 日本以外全部沈没 小松左京
・ 神と野獣の日 松本清張

このうち自分は、「日本以外全部沈没」と「テロリストのパラソル」は読んだことがあります。
「テロリストのパラソル」は、自分にとっては、ずっこけたものだったのですが、東野先生のインタビューでは

・ 内容というより人物で選ばせてもらいました。

とあり納得。東野先生のセレクトは、全部読みたいですね。
ありきたりの選択に見えますが、実に奥深い選択をしています。

青春の逆説
青春の逆説       織田作之助        角川文庫


本屋で「夫婦善哉」の織田作之助の本が置いてあった。
なんでこういう本が新刊であるのか謎だったけど、興味があったので読んでみた。
重松先生の選んだ青春もののセレクションだったみたい。

確かに青春ですね。鬱屈とした、それでいて無駄なエネルギーの放熱がそこにあります。
データーベースでは

自意識過剰でウブな男、毛利豹一。三高に入学したものの、放蕩が過ぎて落第。恋愛も自尊心と経験不足が邪魔をしてうまくいかない。中退後は新聞記者になるが、周囲は珍奇な人物ばかり。そんなある日、豹一はある女性の尾行記事を書くように命じられる。その女性とは、あるスキャンダルがもとで映画界を追放された「問題」の女優だった—。一人の青年の成長を、恋愛や失恋を織り交ぜながら痛快無比に描いた青春小説

この通りなんですが、余り決定的な事件が起こらない、起こっても対してことに思えないような話で、グダグダと豹一さんの周辺で起こったことを語っているだけだですね。
女性への憧れというか、興味は津々みたいなんですが、淡々と自分の運命を受け入れ生きる母親の影響なのか、女性に決定的な一歩を踏み出すことが出来ない。
つまりですね。へたれなんですね。
そのへたれな男は、最後には普通の女の人と一緒になるというだけ、奇しくもそれは、野心家だった自分の父親と同じような運命を辿るようになった。

面白かったのは、中学校時代の年上の女学生とのやりとりだね。
お互い恋に恋する時代で、壮大な勘違いをしているみたいで、付き合っているのか、付き合っていない時代を過ごす。
この辺は、後書きにも書いてあった「赤と黒」の関係をモチーフにしているのだろうね。
ただ、豹一には、明確な野心などはないので、そこは空回り。
そういう空回りが青春だと言いたいのでしょうか。
テロリストのパラソル
テロリストのパラソル     藤原伊織       講談社文庫


ちょっと昔に話題になった本を読んでみた。
1995年発行なので、今から12年前に出た本で、直木賞とかも受賞したもので、自分も過去に手に取った記憶があるような気がする。
冒頭、のっけから、アル中になっている主人公と少女の会話で、自分には合わないと思ったのだろうかね。

自分も年とって丸くなったので、
小説というものは、作者の妄想世界を描くものであると、実感しているし、そんなに長い物語じゃないので、今回は一気に読むことができた。

突っ込みどころ満載だし、全共闘世代のこうなって欲しい、こうあったらいいのに、というような願望が、垣間見れて、微笑ましくなったりして楽しく読み通せた。
が、自分にとっては、この小説を読んで、上手いとか、共感できるとかいうような感じはしないわね
おそらく自分が思うに、作者と同世代ではない人には、それほど楽しめるものではないのではないかな。

内容は、いきなり爆発事件がおこり、主人公が過去のしがらみに巻き込まれながらも、事件の解明に、かっての恋人の娘や、元警官のやくざと探索に乗り出す。
でいいのかな
ミステリーであるので、ネタばれができないが、
ストーリーラインは単純だったので、犯人の予想はつきやすかったかも

粗を見つけようとすれば、いくらでも見つけられそうなんですが、この物語を熱く指示する人も多くいるみたいなので、止めておきましょう。



ただ、かっての恋人の娘の言葉を抜き出してみると

・ 「60年代末期、大学闘争の時代があった。そのことは、君も知ってはいるだろう」
「おおまかにね。母からも少し聞いている。でも、じゅうぶん知っているとはいいがたいわね。大昔の話だもの。もう伝説の時代じゃないの。あなたたちの世代が、自分たちだけの特権みたいに古くさい懐旧譚をしゃべるってことくらい知っている」

普通の若い女の子は、大学闘争の時代を伝説の時代とは、言ってくれないわね。



それと、もう一つ言いたいのは、主人公は、22年もずっとアル中みたいだが、作者は、アル中というのは、手段みたいに思っているのではないのかね。
アル中っていうのも一つの生き方の選択と考えるべきじゃないのかな。
例えば、22年前に改悛して、出家したり、趣味の世界に生きるというのであれば、生き方の選択と言えるようにね。
人は、そんなに過去にばかりに引きずられて生きていくのではないのではと、思ったりするんだけどね。