有吉佐和子の中国レポート 有吉佐和子 新潮文庫
「和宮様御留」を読んだ後、中国でオリンピックもしていることだし、有吉先生が文化大革命直後の中国へ行った時の紀行文を読んでみようと思い手にとってみた。
有吉先生の本だけに、気楽に読めるようなもんではありませんでしたね。
「複合汚染」の問題認識を敷衍して、中国へ突撃した生身の骨太紀行でした。
日本で問題にでなり禁止されていたはずの農薬のDDTが、公然と使われており、密かに汚染が進行している現状に憂い、中国の人たちと熱い会話を交わす有吉先生の姿は、実に勇ましいし、良心そのものにも写った。
戦後日本では、この有害なDDTが役人、製薬会社の手に公然と広められており、禁止されたのは、この紀行の数年前にすぎなかったりする。
人体に十分悪影響を及ばすものであると知りながら、依然としてアメリカも日本も製造は続け、発展途上国へ輸出を続けていたことに怒りを発しておられる。
昨今の中国の餃子や毒菜問題について、未だ有吉先生が存命なら何を思うだろうかは興味があるところですが、日本国内における一方的な中国批判というものにはならないような気がしますね。
とにもかくもこの紀行は、有吉先生のDDTの問題への認識が核にあり、本音でぶつかる有吉先生に中国人もたじたじになってしまうようなところもあって、面白いものでした。
文革後のどこぞに開放的な雰囲気のある中国の空気もよく伝えられていたような気がしますね。
有吉先生は、かっての作家仲間との旧交を温め、中国の農村の視察をすることに夢中なんですが、当事の中国というところは、娯楽というものがほとんどないところですね。