影法師

自分が読んだ本の感想を書くブログです。
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ただマイヨ・ジョーヌのためでなく
ただマイヨ・ジョーヌのためでなく     ランス・アームストロング 安次嶺 佳子(訳)    講談社文庫


「弱虫ペダル」というマンガが好きになりまして、自転車競技そのものにも興味が湧いたりしまして、昨年のツール・ド・フランスの特集も見て、ワクワクしました。

昨年のツールにも、アームストロング選手が出ておりまして、すっかりベテラン選手として、今度は若い選手をサポートしながら、それでも機会があれば、優勝を狙うという姿を目撃しました。

この本は、今から十年くらい前に出された、アームストロング選手が初めてツールに勝った時まで、というより息子を授かったときまでの半生を綴ったものでした。

内容は、自転車競技そのものよりも、癌との闘病記という割合の方が大きいものでしたね。
癌を告知される前、癌と闘った期間、そこから立ち上がった期間。
変わらない性格もありますが、変質していく人格、よき人間、良き父親になっていく姿は、鮮やかです。

この本で最もランスが苦しい癌と格闘しているページでは
信念、信じるという言葉が全体に踊っています。
医師を信じる、看護婦を信じる、家族を信じる。そして自分を信じる。
一番重要なことは、信じる心なのだと。
圧倒的に不利な中、立ち上がるのは、自分と支えてくれる人との信頼。
これは絶対的です。
非常に強いメッセージを発する本です。
世界で勇気づけられた人は多いでしょう。

看護婦が言った言葉も感動的でした。

・ ここを去ったら、二度とあなたと会うことがないように願っているわ。あなたが回復したら、あなたのことは新聞やテレビで見るわ。ここではなくてね。

どういう表現すればいいのでしょうか、自分などは、本当に考えの至らないバカな人間ですなあ。と思ってしまいます。


自転車競技については、淡々と書いています、簡単に勝ってわけではないのですが、自分の決めたルールに従ってこなしていると容易に突破できるようですね。
やはり天才なんでしょうか。

思いこみの激しい短期であったと自ら語っている人が、癌との闘い、愛する人を得たことで、人間的の成長し、そこで初めて、

・ 世界でもっとも男らしいスポーツだと思っている

ツールの舞台で勝つことができた。

この本は10年前のもので、ランス選手は、その後もツールで勝ち続けるんですね。
そのことに必然性も強く感じましたね。
大変元気の出る本です。

有吉佐和子の中国レポート
有吉佐和子の中国レポート      有吉佐和子      新潮文庫


「和宮様御留」を読んだ後、中国でオリンピックもしていることだし、有吉先生が文化大革命直後の中国へ行った時の紀行文を読んでみようと思い手にとってみた。

有吉先生の本だけに、気楽に読めるようなもんではありませんでしたね。
「複合汚染」の問題認識を敷衍して、中国へ突撃した生身の骨太紀行でした。
日本で問題にでなり禁止されていたはずの農薬のDDTが、公然と使われており、密かに汚染が進行している現状に憂い、中国の人たちと熱い会話を交わす有吉先生の姿は、実に勇ましいし、良心そのものにも写った。
戦後日本では、この有害なDDTが役人、製薬会社の手に公然と広められており、禁止されたのは、この紀行の数年前にすぎなかったりする。
人体に十分悪影響を及ばすものであると知りながら、依然としてアメリカも日本も製造は続け、発展途上国へ輸出を続けていたことに怒りを発しておられる。
昨今の中国の餃子や毒菜問題について、未だ有吉先生が存命なら何を思うだろうかは興味があるところですが、日本国内における一方的な中国批判というものにはならないような気がしますね。

とにもかくもこの紀行は、有吉先生のDDTの問題への認識が核にあり、本音でぶつかる有吉先生に中国人もたじたじになってしまうようなところもあって、面白いものでした。

文革後のどこぞに開放的な雰囲気のある中国の空気もよく伝えられていたような気がしますね。
有吉先生は、かっての作家仲間との旧交を温め、中国の農村の視察をすることに夢中なんですが、当事の中国というところは、娯楽というものがほとんどないところですね。