吉川英治 講談社
大河ドラマの「清盛」の背景をもっと知るため、楽しむ為に、吉川先生の本を読んでみることにしてみました
全部で16冊もありますので、読み通せるのかは、自信は無いのですが、とりあえず第一巻を読んでみました
この巻だけで、大河ドラマ「清盛」の半分くらいの、話が語られています
つまり、保元の乱の勃発直前ぐらまで、歴史的因果関係を駆け足で語られているようで、清盛その人そのものよりも、この時代はどういうものであったのか、どうして武士の時代が開けてきたのかを語るのが主であったような気がします
小説というより、歴史書に近い内容でして、かなり骨太なものです
昔の読者は、これくらいの本を娯楽として楽しめたのですから、今の時代よりも強靭な読書する力があったのでしょうね
これくらい歴史的事件の背景を多く語られなくては、清盛その人の登場、成功の秘密は分からないのですから、日本史の中の大きな変換点なんですね
細かいことを、押さえておかないと、歴史的事件の因果関係が全く分からなくなる
その点では、この時代は難しい時代なんでしょうね
自分が、興味深く読んだのは、法師たちの強訴の理由は、寺に帰属する人が増えすぎたこと
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かくて、叡山といえ、三井といえ、奈良といえ、それぞれの僧団は、いまや、従来の特権を保持することと、これほどな人間が、よく食っていくことだけで、ていっぱいの形なのだ。
とあり、強訴を繰り返す僧兵たちの武力に対抗する為に、武士の地位が上昇していった
なるほどと思った
他に、左大臣藤原頼長の描かれ方が、あっさりしているのも、この本の特徴ですね
近衛帝の二后並立、頼長の実質的な勝利と、栄華な日々の記述は、あっさりしてまして、個人的には、そこのところに興味がありまして、少し物足りなかったですね
頼長、信西について、吉川先生の記述では、
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あの悪左府の驕慢も、信西入道には、一目おいている風がある。学識において、頼長よりも一日の長があるばかりでなく、人間の厚みや、思慮の深さでも、頼長はこの人の敵手ではない。
悪左府と呼ばれるほど、頼長の悪は、他愛がなく、どこまでも名門の血の生ぬるさをもつ驕慢であり、依怙地であって、底が測れるが、信西入道となると、その胎の底は、古井戸を除くようで、ちょっと見当がつきかねる。というよりは、のぞきもさせない、人の悪さがある
この巻の終わりで、信西の存在が大きくなっていくところが記述されています
「清盛」では、若き日の清盛と信西との友誼が描かれていましたが、そういう部分は、この本ではありませんでした
ただし、佐藤義清、後の西行と清盛の仲は、描かれてました。そこは、「清盛」でもそうでした