ハリスおばさんパリへ行く ポール・ギャリコ 亀山龍樹(訳) 講談社文庫
ネット時代っていいもんだねえ。
探していた「ハリスおばさんシリーズ」全4冊揃えることができた。
というより、これほどの名作を気楽に文庫で買えない状況はどうにかせんといかんとも言えますね。
毎年夏の恒例のxx文庫の100冊とかに、必ず入れないといけないような本だと自分は思います。
色恋沙汰とかボーイミーツガールなんて、好きな奴はいつでも読むだろ。
人として生きていく勇気と矜持を教えてくれるものを、若者は読んだ方がいいのではないかね。
まあ、流行り廃りはいつの時代でもあるのだけど、「ハリスおばさん」シリーズには普遍的な価値があるような気はしますね。
何しろ、主人公は高齢のおばちゃん。
金持ちでもなく、働きものであるろいうこと、気のいい仲間がいるだけの、ど庶民だ。
でも、品があるんだね、それは日本が誇る大ヒットドラマシリーズ「家政婦が見た」シリーズとは違っているところだね。
この第一冊目の「ハリスおばさんパリへ行く」は、ディオールの服を着たいという一心から、なけなしのお金を持ってパリに行くという話だわね。
あくまでハリスおばさんが主人公で、自分がしがない家政婦でしかないということに卑下することなく、労働者の誇りを持って、パリの一流人とたちと渡り合っていく。その心意気に粋を感じ、ハリスおばさんのパリ滞在をエスコートしてあげる。
ディオールの宣伝小説か、これはと思ってしまうところもありますが、
現代の素敵なシンデレラの物語です。
素敵なドレスをロンドンの自分の家に持ち帰るところで、魔法が解けてしまうようなところになるのが、切ないところだね
ハリスおばさんは、売れない女優にドレスを貸してやり、その女優の売り出し協力をして上げようとしてやる。
その女優は、不細工なハリスおばさんが着るより、自分みたいな美しい女が着るほうが、ディオールの衣装には合っている、そしてその衣装がとんでもない値段であるとも知らずに、台無しにしてしまう。
ハリスおばさんは身の程を知っているので、その現実をさりげなく受け止めるが、その女優の家の家政婦は止めてしまうことで、少しの抵抗を示す。
でも、けっしてその阿呆んだら女優を責めない。自分が人を見る目がなかったのだ。
また、お金を貯めればいいじゃないか。
あくまで前向き。友人のバターフィールドおばさんと、今日も仕事につく。
世の中で一番偉い人は、日々懸命に働き、自分の仕事に誇りを持ち前向きに生きていくことができ、余力があれば、他人をも助けることのできる人だ。
と、この物語は教えてくれるわね。