影法師

自分が読んだ本の感想を書くブログです。
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海軍提督ホーンブロワー
海軍提督ホーンブロワー   セシル・スコット・フォレスター/著 高橋泰邦/訳
早川文庫


ホーンブロワーシリーズの本編の最終巻を読んでみた。
ナポレオンとの戦いの後、カリブ海に派遣されたホーンブロワー艦長の活躍が描かれていたね。
短編を5つ集めたものだった。それまでの大河ドラマと比較すると、あっさり風味みたいだった。
が、さすが中年になり分貫禄がでても、ホーンブロワー艦長は、諸々の事件にかり回されている。

海賊の人質になったエピソードでは、「走れメロス」を想起したわね。
艦長、それでは部下を見殺しです。と突っ込みたかったのですが、その部下というか秘書はあっさり脱走してくる。
この辺のご都合主義的な展開って、このシリーズけっこうあるかも。

セントヘレナのナポレオンを救出しようとするカーンブローヌ将軍にナポレオンの最後を告げに行くところは、敵味方分かれているけど敬意があって良かったわね。

他、18歳の少女の恋慕されるところなんかは、エピソードに入れる必要はあったのかなあ。
最後にハリケーン。夫婦仲を確かめ合う展開も、良かったとは言えますが。そこで終わっちゃうんだ。

自分としては、このシリーズの最初の三巻くらいまでがやっぱり好きですね。
ホーンブロワー艦長は、サルベージしたり、訳の分からない人物の独立を助ける煽動行動とか、変な任務でのし上がっていくのは、どうなのかね。
そこに、まだまだこの時代を描いた冒険小説が出てくる余地があったのかも。
正面からナポレオン率いるフランス軍と激突というのがちょっと少ないね。

でも、のろまの自分としては十巻読み通せたのは、感慨も大きかったわね。
「砲艦ホットスパー」ぐらいまでは、繰り返し読みたい本として、自分の殿堂入りしたかも。

女王陛下のユリシーズ号
女王陛下のユリシーズ号  アリステア・マクリーン/著 村上博基/訳  早川文庫


超傑作と名高い冒険小説を読んでみた。
内容は、
輸送船団の護衛の任務についたユリシーズ号。その前途には時化やら、敵襲など様々な困難が待ち受ける。逆境の中でも雄々しく戦い死んでいくものたちを切々とうたいあげていく話だったね。

マクリーン節としか言いようがない、酩酊している人が書いているかのような熱い描写が続くね。
最初から、もうピンチ。
途中でもうダメ、そこから先行っちゃダメ。
でも行っちゃった人たち。その運命は。
戦争なんだから仕方ないけど、目頭がゆるんでくるね。

・ 海上を疾駆する魚雷であふれたー三本、五本、十本  ヴァレリーは三十秒に三十本までかぞえた。
・ 全艦船回避は不可能だった。

とあるところ

・ ユリシーズはあざやかだった。最大角転舵と巨大なスクリューの推力で艦体をかたむけながら、四本の魚雷のおそろしくほそい間隙をくぐったが、そのうち二本は、左右舷側をボートひとつほどの距離ですりぬけて行った。やはり幸運な艦だった。

船が生き物のようだね。
乗っている人たちも熱かったが、ユリシーズ号自身熱かったのかもね
セーヌ湾の反乱
セーヌ湾の反乱    フォレスター/著 高橋泰邦/訳    早川文庫


この巻は九番目の話で、いよいよ物語も大詰めになってきたわね。
ここでは、ホーンブロワーにとっては親しい人が亡くなってしまう。
そこで亡くなっちゃうんだ。あの人がね。
それともう一人。

ナポレオンのフランスとの戦争ももう終わりというところで、英国軍艦内で反乱が起こったとのことで、その鎮圧にかり出されるホーンブロワー艦長。
その乱処理後、ブッシュとも再会し、ナポレオン支配下の後始末の為に艦隊を率いる。
その後意外な再会もあった。

なにやら書き難いところですね。
「勇者の帰還」での出来事がここでリンクするとは、思ってもみなかったですね。


・ ネルソンと比較するのはナンセンスだ。ネルソンは傑物だった、稲妻のようなひらめきのある人物、接する者すべての心を奪い立たせずにおかぬ人物だった。それに比べて、こちらはただ幸運な努力家でしかない。格別の幸運がすべての成功の根源なのだ。幸運、それと長考熟慮、さらには部下たちの献身のおかげなのだ。
トルコ沖の砲煙
トルコ沖の砲煙     フォレスター/著 高橋泰邦/訳    早川文庫


この本は、ホーンブロワーシリーズの第四巻になるね。
この巻では、トラファルガーの海戦後の話で、その有名な海戦そのものを描くのではなく、その海戦で亡くなったネルソン提督の葬列の指揮をすることになるホーンブロワー。
合間に、やっぱり妻のマリアさんといちゃいちゃしたりしている。ところどころでキスをする。やっぱり愛情問題で微妙な感慨を持っていたりしたりするホーンブロワー艦長。

・ 君はね、ぼくのすべてなんだよ。ぼくの世界に、君ほど大切なものはないんだ。

・ あなたは世界中でいちばん優しい旦那さま

とかとか言っちゃてる。言葉にしないと愛情を伝えることができない国の人たちは大変だね。

この巻の任務は、トルコ沖に沈んだ英国船から金貨、銀貨をサルベージすること。
同盟国のトルコに気付かれることなくやり遂げなければいけない。
乗船した中に、士官候補生としてドイツの小国の王子が乗ってくる。
その他、王子の取り巻きの医師とかが問題を引き起こし、ホーンブロワー艦長を悩ますし、副長のジョーンズもブッシュに較べると頼りない存在だ。
果たして、無事任務をやり遂げられるのか。

といったところでしょうか。
やっぱ人間関係が大変だ。
決闘したり、船上で踊ったり、
そういうことで悩まされるのだから、やってられないわね。
砲艦ホットスパー
砲艦ホットスパー   セシル・スコット・フォレスター/著 菊池光/訳   早川文庫

これはホーンブロワーシリーズの年代的には三番目の話なんだけど、書かれたのは本編の最後。老成した筆で書かれている感じで、大変渋いです。

ホーンブロワーの海尉艦長時代の話なんですね。
海軍内で引きがなく、出世の見込みも余り無くても、目の前に通る敵艦を拉致することも加担せず(戦争時に拉致した船は戦利品になる。)せっせと任務に励むホーンブロワー艦長。
猛烈野郎です。

この巻の始まりのところで、結婚してしまうホーンブロワー艦長。新婚ほやほやで、妻のマリアはホーンブロワーにぞっこんで、幸せオーラーを放っているのに、それに対して

・ これほどまでに献身的な愛情を受けるに値しない。自分の真の気持を知ったら、マリアは全人生を打ち砕かれるた思いで自分に背を向けるにちがいない。彼女にそのことを知らせるほど残酷な仕打ちはないーだから、絶対に知らせてはならない。

なんで結婚したのだ。ネガティブなんですよね。この巻の間中ずっとその愛情問題で悶々としている。勇者なのに、内面はいじいじ。その落差が楽しいですね。
でも、男の内面を深く抉っているので、面白いし同意できますね。

この巻の使命は、ナポレオン治下のフランスのブレスト港封鎖が仕事。
敵地にホーンブロワー艦長自ら指揮して上陸したりと、奮闘している。
副長は、ブッシュ。
苛烈な艦長ぶりは、この頃からだったのですね。
この巻では、艦長の身の回りを世話する当番兵の扱いがポイントになっていたね。
新旧二人の当番兵の扱いに苦慮している。
軍法会議にかけられそうな当番兵を見逃して脱走させてやったのを、またいじいじ悩んでいるね。

・ 脱走者、犯罪者の逃亡を黙許したばかりでなく、現実に逃亡手段を考えだし出てやった。神かけた誓言を破った。ーそれも、個人的な理由、たんなる恣意に基づいて。海軍のためでなく、国のためでもなく、自分が気が弱い感傷家であるがゆえに犯した過ちだ。

こういうところで深く反省するのが、ホーンブロワー艦長であるところ。

ホーンブロワーの活躍は、引退する提督の目につくことになり、提督は引退時の特権を駆使することで、ホーンブロワーを海尉艦長から勅任艦長に昇格させる。

・ いまもいったように、わしは海軍のためしか考えていない。きみが、わしが選びうる最高の人間なのだ、ホーンブロワー

ここでまた自分は泣いた。

その他に言葉を拾ってみると

・ 「全弾命中です!」せきこむようにいった。「一発残らず、命中しました!」

読んでいて思わずガッツポーズ。偶然ではなく必然でやってのけている。
やるねえホーンブロワー艦長。


・ 「あなたは、なにか高潔なことをしたのね」マリアはいった。
「ブッシュは酔っていたのだ。わけのわからないことを口走っていただけだ」
「どうかしら」マリアが目を輝かせていった。
「私は前々から、あなたは高潔な人だと思っていたわ」
スペイン要塞を撃滅せよ
スペイン要塞を撃滅せよ  フォレスター/著 高橋泰邦/訳    早川文庫



このシリーズでは二番目の話で、ホーンブロワーの海尉時代。つまり下士官として活躍する話だね。
このシリーズ後半共にするブッシュが、先輩海尉といして同じく乗船しているレナウン号でホーンブロワーに出会う。
先輩、後輩という枠組みを越えて、当初から運命的なものを両者感じあっていたみたい。
この巻は、ブッシュの視点から述べられていて、端から見るホーンブロワーという男が、実に創意工夫に富み、勇気のある、そして謙虚、というより自分を不当に蔑ろにしている男として写っていたみたいだ。
とても複雑だけど、気持ち良い奴だとね
ブッシュにとって、このような男に出会ったのは始めてで、ホーンブロワーに強く惹かれる。
そこに嫉妬というものより、どうしてこういうことが出来るのかという憧れみたいなものを感じてしまうのが、おかしいところだね、
他者の優れたところを、素直に容認できるところに、ブッシュが傑出した人物だった証なのかも、

レナウン号における艦長が、実に厭らしい男で、下士官たちを蔑ろしする、その中でもホーンブロワーは目の敵にされる。そういう艦の雰囲気は、ブッシュの目からすると

・ この艦には、身の危険を冒してでも断固とした意見を言う者がいないのだと、暗澹たる思いだった。

そこで下士官たちが、謀議して艦長をなんとかしてやろうという話をする。
そこは実に面白いね。
英国海軍では、無能な上司をうっちゃっても、あとの軍法会議で申し開きを上手くすれば、なんとかなるという考えなんだろうかね。
こういうところは風通しがよいわね。
英国海軍においては、無能というのが、最大の罪なんでしょうか。
ここが、この本が日本の指導者にそれほど熱く支持されないところなんだろうか。
状況が揃えば下克上容認なんだもんね。
この軍法会議では、船員たちの意見も優先される。実に民主的だね。
英国海軍の底力は、こういうところにあるのでしょうかね。

この巻の途中で、艦長が階段から落っこちて重傷を負う。(この原因は不明)
そこで副官が艦長になって、この艦に密かに与えられていた密命に沿って、スペイン要塞の攻略に乗り出す。
真っ正面から立ち向かうが、敢えなく惨敗。
その後ホーンブロワーの意見を入れ、奇襲を決行することになる。
下士官からの大胆な意見に快く思わなかったこの臨時艦長は、ブッシュを奇襲隊を指揮させることにする。
ブッシュは、そこに連れて行く人材に、ホーンブロワーを指名する。
ホーンブロワー自身出過ぎた提案をしたことで、この奇襲隊への参加を自身諦めていた。
内心参加したくて仕方なかったのだが、ここに彼の謙虚過ぎる性格、自分を蔑ろにし過ぎる上に、他人に所詮は自分は認められないという諦めがあった。
そこに思わぬ光明が

・ 冷静な判断の結果でもなく、もっと他の理由からきたものだった。
親切心とも情愛とも言えた。彼はだんだん、この快活多才な青年を好ましく思うようになっていた。彼の肉体的な勇気についても疑いはない。
「ミスター・ホーンブロワーを連れていきたいと思います。」

ここで自分は泣いた。男の友情というか、情愛に、二人の終世の繋がりができた瞬間だね。

その奇襲は成功。
ホーンブロワーは、ここで信じられないくらいの活躍をする。ブッシュも驚くくらいだ。
その活躍が認めら新任艦長に任命される。
ここでも、ブッシュが正当にその報告をしたからそうなったのだ。
ブッシュには後輩に遅れを取って悔しいとかの嫉妬心はない。
そこでホーンブロワーは新任艦長として去る

そして戦争が終わり、イギリスで休職中のブッシュは、艦長の座も実は認められなくて、休職手当も貰えず、酒場で賭けゲームをして食っているホーンブロワーに再会する。
どん底の中のどん底。

ここにこのシリーズ全体を貫くテイストがあるわね。
運よくそうなったとか、順番待ちして地位を手に入れるということをホーンブロワーにさせない。己の力で上がっていかなくてはいかない。
逆境で、助けてくれる者がほとんどいない状況。幸運よりも不運ばかりに見舞われるとしても、立ち上がらなくてはいかない。
真の男の世界は厳しいのだ。

最後に再び戦争が、ホーンブロワーは艦長として召集される。


・木造の帆船を指揮するのに必要な、無数も細かい実務に精通すること。艦の操船ができるというだけでなく、索具やケーブル、ポンプや塩漬けの豚肉、木材の腐朽や陸海軍条例にも通じていることー それが必須の条件なのだ。しかし、その他にも同じく必要な条件があることも、いまの彼は知っている。大胆不敵だが思慮深い率先力、心身の勇猛さ、上官と部下の両方を巧みにあしらう手腕、鋭利機敏な思考力などだ。戦う海軍には戦いがなくてはならないし、それを率先指揮する戦士がいなくてはならない。
海軍士官候補生
海軍士官候補生     セシル・スコット・フォレスター/著 高橋泰邦/訳 、早川文庫


自分はホーンブロワーシリーズでは、第5作の「パナマの死闘」から読み始めたのだが、「決戦!バルト海」であれれと思い、「セーヌ湾の反乱」では、ちょっとね。
面白いのだが、そんなに続きを読みたいと思わなくなった。
そこで遡って第1作「海軍士官候補生」を読んでみた。

これは、面白いだけでなく、為にになる本だ。
為になるというのは、実は珍しいと自分などは思うんだよね。
何処が役に立つというかと言うと、
組織の中で、はずれ者はどう生きていくかということと同時に、はずれ者を組織がどう受容していくのかを考えさせるところかな。

将来、海軍提督まで上り詰めるホーンブロワーは、実はかなりイタイ人で、言ってみれば腐ったミカンだ。(金八先生ですか。)
どこかイタイと言うと、自分というものを大事にしない、自分の命を軽視している。
人に取り入ろうという気はないし、気もきかない。
いじめられるべくして、いじめられるような人だ。
そこを、英国海軍の上司たちは、どうしたか。
とりあえず配所替えはした。
が、つまり、ほっといたんだね。
取り立てて役に立つ能力があると思った仕事を割り振っていっただけ。
能力を発揮するなら、英国海軍は認められる組織であったこと。
風通しの良い組織だったことの証明だね。
これが、英国海軍が最強だったことの一つの秘密なのかしら。
このシリーズを読んでいけば、他にもあれこれあるけどね


ホーンブロワーが一番怖れたのは、卑怯者であると呼ばれること。
そして自分に恥じる行動をすることだ。
ホーンブロワーには、功名心はない。

与えられた仕事、奪取したフランスの商船を自らの見通しの甘さで、沈めてしまったと思いこみ、なんとか挽回しなくてはと思って、英国船が近くに来たとき。英雄的な活躍で、自分が捕虜になっていた船に火をつけ、窮地を脱出しても、
自分の過ちを恥、自分の功は誇らない。

・ 無能に言い訳は成り立たない

と自分を説き伏せる。

高い所に登るのが怖くてどうしようもないのに、
部下がそれを回避しようとすると

・ 危険な任務を割り当てられたあとで気分が悪いと訴える者に与えられるものは軽蔑以外の何ものでもない。ホーンブロワーは軽蔑と同時に同情をおぼえた。

そしてポストに自ら登るとき

・ 肉体的な勇敢さという単純粗野な面で自分は完全に欠けている。これは臆病というものだ。ー男たちが他の男たちへこっそり耳打ちするたぐいのものだ。それは考えるだに忍びない。ーこれは闇の中を甲板へ落下する思いよりも、もっと悪い。

そして、なんとか登り切り、降りてきたときに、年配の部下から

・ お若い紳士(士官候補生の俗称)にはよくあるこってすよ。実に命知らずで、向こう見ずですからね。

ホーンブロワーは、命知らずで、臆病者ではないと呼ばれたいのだ。
そして、これは彼への最大の賛辞だ。

かれの勇気の源は、義務感だったりする

・ 狂い立った闘争心はもう潮の引くようにひいてしまっていたので、ホーンブロワーは陰鬱な気分だった。自分がどうなろうと平気だった。希望も恐怖も、さっきの高揚した状態と一緒に彼から失せていた。彼の心だけはまだ働いており、勝利をおさめるために為すべきことが一つでもあるかぎり、それを試みるべきだと彼にすすめ、そして彼の精神の気の抜けた不活発な状態のために、彼は自動人形のように、ためらいもなく無感情にその試みを実行することができた。

今の時代でも、危険な仕事を立派に為している人の内面こうなんだろうね。
私心がないというのが重要だわね。

この巻で、ホーンブロワーは捕虜になり二年間もスペインで過ごすという失意の時代を過ごすのだが、その働きは認められ昇進し、義侠的活躍も認められて解放された。
そんなに恵まれているとは言えない中、立ち上がる姿は、真の男の世界を描いたものと言えるでしょうね。
全く色気はありませがね。
いやちょっと待てよ、
作者にとっては、公爵夫人改め、女優さんとのやりとりは、それに該当するのかしら。
決戦!バルト海
決戦!バルト海      フォレスター/著 高橋泰邦/訳    早川文庫


中断していたホーンブロワーシリーズの続きを読んでみた。
ここでの内容は、艦隊の指揮官としてバルト海へ派遣されたホーンブロワーの活躍を描いていた。バーバラとの幸せな生活よりも、海に出てでなんぼ、配下のブッシュも艦長になっている。
でも、ナポレオンのロシア遠征を睨んでのの派遣なので、人任せとも言えて、ちょっと不満が残るわね。そんなにホーンブロワー自身は活躍していないかも
原題もCommodoreで、船隊指揮官というものだしね
本当に決戦しているのはフランス軍とロシア軍やんけ

大河小説でもあるので、こういう巻もあっても良いけど、ここでの仕事は地味。
それを言ったら、ホーンブロワーシリーズの惹起文、その本の紹介文も大げさだわね

特筆すべきは、クラウゼウィッツさんが出てくる。戦争論のあの人なのかな

勇者の帰還
勇者の帰還    セシル・フォレスター/著 高橋泰邦/訳   早川文庫


前巻で、捕虜になってしまった、ホーンブロワーと副長ブッシュは、パリで処刑される運命になった。が、護送途中に奇跡的に脱出に成功し、拿捕されていたイギリス船を乗っ取って、イギリスに戻った。

この巻は、かなりご都合主義的な展開で、いわゆるちょー展開なのかもね。
ホーンブロワーの身辺のロマンスもあり、帰ったら、身重な妻が、………

あまり内容に触れすぎたら、いかんので、この辺でやめておくけど、ホーンブロワーにとって幸運な出来事が多々あったね。

ちょっと、それでは、あまりにも都合良すぎだよ。
前巻の熱い展開と、いまだに捕虜のままのサウザランド号の元乗組たちがいるのにね、

やっぱり、このシリーズは、海に出てなんぼのものという物語なのかもね

レディ・バーバラという女性も、古風な男が望む理想的な女性をそのまま描いたような造型というのも少し気になった。それはそれで、ある種の願望を達成していて良いのだけど、新しい読者たちには、ちょっと抵抗があるかも

燃える戦列艦
燃える戦列艦    セシル・フォレスター/著 菊池光/訳    早川文庫


まず抜き出してみると

・残りの敵艦と相対するのを知ると、少なくとも半数が確実に死ぬことになるのに、乗組員がまたもや歓声をあげた。哀れな愚か者だ。ホーンブロワーは、彼らに対して、彼らの気違いじみた闘争心や栄光を求める気持に対して、憐れみーそれとも侮蔑?ーを感じた。

戦闘を避けることができたのに、冷静に自分の船を一隻失うのと敵の4隻の戦列艦を失うことを比較考量し、死地に赴き、それに歓喜をもって応える乗組員たち。

男だなあ。なんか知らないが痺れまくりだ。
これは、ロマンなのか。それとも狂気なのか

次々と死んでいく乗組員たち。メインポストが折れ、航海不能になり、大砲を撃つ砲員がいなくなっても、最後まで絶望的な戦闘を繰り広げる。
時間は、ゆっきり流れていき、時には速く、過ぎるような描写だ。

といっても、この巻の海戦シーンは、最後の方だけで、

最初は、レディ・バーバラへの恋心に悶々とするホーンブロワー艦長。
途中では、自ら上陸部隊に参加して、すっぽんぽんになったり、上司の提督とのやりとりに汲々したり、スペイン軍との共同作戦において、スペイン人のいい加減さにいらいらしたり、嵐に見舞われたりと、いろいろな苦難がホーンブロワー艦長に降りかかってくる。

そういう苦難に冷静に、最善の策とは、何かを考え、的確に行動し、決して弱音を吐かず、前向きに対処するホーンブロワー艦長。
あんたは、なんてモーレツ野郎なんだ。

それにしても、味方の護衛していた商船から兵員を強制徴収してしまうという発想は、もう天才的だわね。
大事な顧客を脅してでも、難局を乗り越えようとする意志は、アングロサクソン人が、世界の海を制覇できた要因の一つなのかも
逞しい海賊根性というのかな



更に、抜き出してみると


・敗北というのは、戦う者が遅かれ早かれ遭遇する不運です。今日、昨日の報復ができることを祈っていましょう



・海戦の勝敗は相手の虚をつくことによって半ば決まるといってよい